COFFEE COUNTY started there.

 森です。今年になってコーヒーに感動することが多いのですが、先日は涙をにじませてしまいました。


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 ニカラグア・エンバハーダ農園、当店の最初期より購入させてもらっていて、当店を長く利用いただいてる方にはお馴染みの銘柄かと思います。COFFEE COUNTY の開店前、私が主に滞在したのがニカラグアです。写真の生産者・セルヒオさんの別の農園、カサブランカ農園に住み込み、約3ヶ月研修させてもらいました。セルヒオさんの所有する3つの農園のうち、最も山深く、アクセスが悪く、困難な環境で、だけど美しく、素晴らしいコーヒーを生み出すのがエンバハーダ農園です。農園までの道のりは大変険しく訪ねるのは大変ですが、一歩足を踏み入れるとわかる特別な環境。森の中に野鳥の声が響き、独特の植生と微小気候が作り出す神秘的な農園です。

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 開店前、産地で買い付けたのがこのエンバハーダ農園とカサブランカ農園で、この二つのコーヒーだけでCOFFEE COUNTY を始めました。以降、毎年訪ね、継続して購入して来ました。エンバハーダ農園は当店を代表する、また最も大切な農園と言えます。

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 毎年エンバハーダ農園とは様々な取り組みをしてきました。しかし、昨年は収穫がなく、その結果もちろんのこと入荷がありませんでした。主な理由は天候不順と、これに関連してくる労働コストの増加です。前述の通り、過酷な環境のこの農園、周辺からのアクセスが悪く、山肌の急斜面にコーヒーの木が植わり、労働環境が厳しいです。昨年は収穫期に天候が悪く(雨が降り、低温)、完熟前のコーヒーチェリーが地面に落ちてしまいました。悪天候により労働環境がさらに悪化、ピッカー(コーヒーの実を手摘みする労働者)のコストが甚大です。ニカラグアの法定のピッカーに支払う金額の2.6倍もの金額でオファーしてもピッカーが集まらなかったということです。結果、コーヒーの実は地面に落ちてしまいます、負のスパイラルです。歩合のいい隣国のコスタリカ(ニカラグアより格段に裕福)に多くのピッカーが流れていってることも要因としてあると思います。

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 そんな昨年を経て、セルヒオさんはエンバハーダ農園を売りに出していました。収穫すらできず、当然の赤字、政治情勢もあり銀行はお金を貸してくれません。コーヒー農家としての存続が大変厳しいなかで手放すしかないという苦渋の決断です。もちろんこの農園が素晴らしいコーヒーを生み出すということはセルヒオさん自身が一番わかっています。ですが割に合わないのです。私も何かできないものかと考えて来ましたが、その場しのぎではダメ、との思いが拭えず時が過ぎました。

 結局現時点まで農園は買い手が見つからず時間が過ぎ、今年も収穫時期を迎えました。今年はいくらかの収穫を得ることができたようで訪ねた際、「これは君のためのコーヒーだ」、と特別なものを用意してくれてました。カッピングの結果、まずまずでしたが極端に高い評価をしたわけではありませんでした。その理由の一つは彼がトライアンドエラーを繰り返し、磨き上げて来たプロセスにあると思います。Triple Fermentation. 3段階の発酵過程を意味します。非常に手間のかかる高コストなプロセスです。なんとも大げさな味のコーヒーを作り出しそうですが、それぞれの発酵過程に彼なりの意味があり、洗練され、かつ複雑な風味を作り出します。しかしこの複雑さゆえ、現地でのカッピングでの非常にフレッシュな状態の場合、真価を発揮できていなかったのだと思います。もちろん並んでいた彼の様々なコーヒーの中では最も評価をしましたが。


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 最近のスペシャルティコーヒーにおいて時折見られるプロセス偏重のインパクトが強いだけのコーヒーではありません。テロアール(土地)とプロセス(人)の掛け合わせで良いコーヒーが生まれます。どちらが欠けても素晴らしいコーヒーは生まれません。セルヒオさんは時折コスト度外視でマニアックになりがちですが…、ここにきて数々の経験から風味の向上と洗練、その両方を獲得しています。

 さて、冒頭の話、涙をにじませたコーヒーですが、先日このエンバハーダ農園のコーヒー2種が入港し、サンプルを取り寄せ、テストローストし、カッピングを行なった、10月28日のことです。こんなに素晴らしい風味になるのか!と感極まってしまいました。エイジング、そして船旅を経て到着した今、素晴らしい風味に変貌していたのです。

 現地での生豆買い付けの際は、その時に出来上がった風味のものをそのまま評価してしまうと到着時あれ?となってしまうことがあります。到着までの時間を逆算して選定、買い付けするようにはしています。ですがこのコーヒーはその想像をはるかに上回りました。

 セルヒオさんにメールをしました。あなたの作ったコーヒーは、これまでのエンバハーダ農園史上最高の出来、僕の買った値段の倍の価値があるよ、と。世界中で最も素晴らしいコーヒーの一つだ、と。

 その前に送ったメールには返信がなく、コーヒー農家を辞めてしまった、もしくは気持ちが切れてしまったのかなと心配していました。ですが上のメールには返信があり、「まだやってるよ」と自嘲気味に、そして「そう言ってくれる人を待ってた、自信になった」と言ってくれました。「もっと上を目指す」とも。

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 依然としてセルヒオさんのコーヒー生産者としての経済状況は厳しいものです。
私はそこで買い付けたこのエンバハーダ農園のコーヒー2種(TF Natural, TF Pulped Natural)を買い付けた金額から算出される価格よりもいくらか高い金額で販売したいと思います。そしてこのコーヒーから得られるすべての売り上げの20% をセルヒオさんに寄付します。

 焙煎も含めクオリティに関しては絶対の保証をします、さらにこの金額以上の価値のあるコーヒーだと約束します。
 

 このコーヒーの20% の売り上げをセルヒオさんに還元した場合、概算では約45万円がセルヒオさんに渡ることになります。この金額は、今回の私の買い付けでセルヒオさんに渡る金額と同等かそれを少し上回るもので、つまりは倍の金額でセルヒオさんからこのコーヒーを買ったのと同等のことになります。その価値が十分にあります。

 しかし、倍の金額で買った場合の価格で今回みなさまに販売しているわけではありません。その場合は今より高い値段で販売せざるを得ません。上記のようにセルヒオさんの作ったコーヒーへの正当な評価と考えてください。

*寄付の結果は、販売終了後、送金が完了次第こちらで報告させていただきます。

 このエンバハーダ農園の2種のプロセスのコーヒーは当店にしかありません。ロースター、伝え手、売り手としての私を信頼し、大変な中このようなチャレンジをし、素晴らしいコーヒーを作ってくれたセルヒオさんを労いたい。ですが、この取り組みによってセルヒオさんの農園経営が上向く、などとは全く思っていません。人助けがしたい、というのとは少し違います。ただ、一人のコーヒー好きとしてはエンバハーダ農園のコーヒーを来年も飲みたいし、ロースターとしては、来年このコーヒーを価値に見合った適正な価格で買いたい、そしてこの素晴らしいコーヒーを来年も皆さんに届けたい!という思いからです。

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 セルヒオさんにこのエンバハーダ農園から来年もまた素晴らしいコーヒーを作ってほしい、そのための一つの励ましになればと思っています。


 
 Triple fermentation Natural のロットからリリース、そこにしかない自然と人の手が生み出したとても美しいコーヒーです、是非味わってみてください。

Nicaragua Finca La Embajada Triple Fermentation Natural 200g

Nicaragua Finca La Embajada Triple Fermentation Natural 400g

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